自治体総合政策研究所

地方分権時代の自治体政策シンクタンク

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〈コラム〉

自治基本条例の本質

市民と行政・議会は野球のチームメイト?
  近頃、市民、行政、議会の三者を野球のチームメイトになぞらえて、それぞれが役割を分担し、活動できるかという、「協働のまちづくり」をキーワードとした自治基本条例を主張する考え方を目にすることがある。
  この考え方は、「所与」のものとして政府(行政、議会)によって市政が担われているという前提に立っている。つまり、政府(行政、議会)は、主権者によって創造された「機関」ではなく、既に権限を持って存在しており、従って、市民と対等な関係にあると観念するわけである。そのため、市民には市民としての役割(従って、責務もある。)があり、政府(行政、議会)もそれぞれ行政、議会の役割があると考えるのである。


重畳的誤解の連鎖
  ここに、主権者(上位)と信託された「機関」(下位)という上下構造は生ぜず、フラットな対等な関係が存在することとなる。そして、これは、まったく意味が異なるのであるが、「協働」の対等関係とリンクしてしまう。さらに、皆で行う「まちづくり」という言葉が、これらのことを市民に誤った納得をさせてしまうものになるのである。
  「市民には役割と責任があります」と行政から公共分担の役割を押し付けられ、「それをするのが、市民の役目であり義務である」と対等の行政から「協働」という名目によって言われるということになるわけである。


自治基本条例の本質
  自治基本条例とは、そういう仕組みを作ることなのだろうか。主権者である市民と政府(行政、議会)は対等だということであろうか。「最高法規」としての自治体の憲法とは果たしてこのようなものなのだろうか。
  否である。国民主権を謳う憲法を擁し、憲法に定められている「地方自治の本旨」を実現するために、市民は、自治体(政府)をつくったのである。その自治を行うにあたって、主権者である市民が、自らが創り出した機関である政府(議会、行政)と対等であるとの主張は、「主権」という意味をまったく理解していない論であるといわざるを得ない(「自治基本条例における「信託論」について」2008年2月号~4月号参照。)。
  自治基本条例は、憲法がそうであるように、信託関係を明らかにし、権力を付与される者(政府)に、信託条項の一覧表(それが自治基本条例である。)に基づいて行動することを、主権者である市民が、「命令する」ものなのである。けっして、「協働によるまちづくり」のルールを定めるものではない。

     自治体総合政策研究所 石井 秀一

2008年版政策研究レポート(主要記事一覧)

○2008年11月号

《論 説》  住民投票の論点(その5)―「投票資格者の範囲」②―

○2008年10月号

《論 説》  住民投票の論点(その5)―「投票資格者の範囲」①―
《コラム》  教育委員会

○2008年9月号

《論 説》  「第二ステージ」における指定管理者制度の課題
《紹 介》  超資本主義 (Supercapitalism) ―暴走する資本主義―

○2008年8月号

《論 説》  住民投票の論点(その4) ―「投票対象事項」―
《時 事》  「過払い金」の差押え

○2008年7月号

《論 説》  住民投票の論点(その3) ―首長に発議権を認めるべきか―

○2008年6月号

《論 説》  住民投票の論点(その2) ―直接民主制VS間接民主制、住民投票VS二元代表制―

○2008年5月号

《論 説》  住民投票の論点(その1) ―「住民投票が求められている理由」―
《時 事》  政府による「政策」の失敗 

○2008年4月号

《論 説》  自治基本条例における「信託論」について-下-

―松下啓一著「自治基本条例のつくり方」にみる問題点に対して―

《コラム》  市民の責務について

○2008年3月号

《論 説》  自治基本条例における「信託論」について-中-

―松下啓一著「自治基本条例のつくり方」にみる問題点に対して―

《コラム》  市民協議会における「市民代表性」について

○2008年2月号

《論 説》  自治基本条例における「信託論」について-上-

―松下啓一著「自治基本条例のつくり方」にみる問題点に対して―

《法 制》 述語のルール  

○2008年1月号

《論 説》  地方自治の主体たる市民の品格
《時 事》  自治体汚職(総務省発表)―06年度は159件、過去10年間で最多― 






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政策レポートバックナンバー

2008年11月11日号(No.19)

■論 説
   住民投票の論点(その5)
  —「投票資格者の範囲」②—
■コーヒーブレイク
   「青と白の視点」
   「私は貝になりたい」
▼内容を読む

2008年10月10日号(No.18)

■論 説
   住民投票の論点(その5)
  —「投票資格者の範囲」①—
■コラム
  教育委員会
■コーヒーブレイク
  「非現実の王国で」
   —ヘンリー・ダーガーの生涯—
▼内容を読む

2008年9月10日号(No.17)

■論 説
  「第二ステージ」における指定管理者制度の課題
■紹 介
  超資本主義(Supercapitalism)
  —暴走する資本主義—
■コーヒーブレイク
  兵士たちの戦争と証言
▼内容を読む

2008年8月10日号(No.16)

■論 説
  住民投票の論点(その4)
   —「投票対象事項」—
■連 載
  小説 「限界集落」-3-
■時 事
  「過払い金」の差押え
■コーヒーブレイク
  ゴッホの「古靴」
▼内容を読む

2008年7月10日号(No.15)

■論 説
  住民投票の論点(その3)
  —首長に発議権を認めるべきか—
■連 載
  小説 「限界集落」-2-
■コーヒーブレイク
  「難死」という思想
▼内容を読む

2008年6月10日号(No.14)

■論 説
  住民投票の論点(その2)
  —直接民主制VS間接民主制、住民投票VS二元代表制—
■連 載
  小説 「限界集落」
■コーヒーブレイク
  「たったひとつのたからもの」
▼内容を読む

2008年5月10日号(No.13)

■論 説
  住民投票の論点(その1)
  —「住民投票が求められている理由」—
■時 事
  政府による「政策」の失敗
■コーヒーブレイク
  「何も足さない。何も引かない。」
▼内容を読む

2008年4月10日号(No.12)

■論 説
  自治基本条例における「信託論」について—下—
  —松下啓一著「自治基本条例のつくり方」にみる問題点に対して—
■コラム
  市民の責務について
■コーヒーブレイク
  裁判員制度
▼内容を読む

2008年3月10日号(No.11)

■論 説
  自治基本条例における「信託論」について—中—
  —松下啓一著「自治基本条例のつくり方」にみる問題点に対して—
■コラム
  市民協議会における「市民代表性」について
■コーヒーブレイク
  「失われた二つのリンゴ」—長谷川テル
▼内容を読む

2008年2月10日号(No.10)

■論 説
  自治基本条例における「信託論」について—上—
  —松下啓一著「自治基本条例のつくり方」 にみる問題点に対して—
■法制執務
  述語のルール 
■コーヒーブレイク
  島津斉彬に学ぶ
▼内容を読む

2008年1月10日号(No.9)

■論 説
  地方自治の主体たる市民の品格
■時 事
  自治体汚職(総務省発表)  
   —06年度は159件、過去10年間で最多— 
■コーヒーブレイク
  「迷惑」という誤訳 —日中外交から—
▼内容を読む

2007年12月10日(No.8)

■論 説
  自治基本条例の最高法規性について—下—
■時 事
  多選禁止条例を制定
    —神奈川県、全国で初—
■コーヒーブレイク
   雪 
▼内容を読む

2007年11月10日(No.7)

■論 説
  自治基本条例の最高法規性について—中—
■特 集
  流山市作成の「素案」(案)の問題点について
■時 事
  公務員の懲戒処分 
   —両陛下訪問案内状の入力ミスは不敬罪?—
■コラム
  指定管理者制度の問題点
    —自治体と指定管理者との思惑の乖離—
▼内容を読む

2007年10月10日号(No.6)

■論 説
  自治基本条例の最高法規性について—上—
■ 時 事
  自治体のアウトソーシング
   —美祢社会復帰促進センター—
■ コーヒーブレイク
   ダークマター 
▼内容を読む

2007年9月10日号(No.5)

■論 説
  防災条例の研究 —下—  
■時 事
  自治体の「予算」を学ぶ
    —その2「予算のなかみ」②—
■コラム
   チャイナシンドローム
    —柏崎刈羽原発事故—
■コーヒーブレイク
   オリジナリティとかいうもの  
▼内容を読む

2007年8月10日号(No.4)

■論 説
  防災条例の研究 —上—  
■時 事
  高齢者虐待防止法について
■コラム
  老人介護をめぐる問題
  —日田嘱託殺人事件を契機として—
▼内容を読む

2007年7月10日号(No.3)

■論 説
  公共分野のアウトソーシング
   —指定管理者制度の課題—
■連 載
  自治体の「予算」を学ぶ
   —その2 「予算のなかみ」①—
■時 事
  神戸空港問題
   —需要予測による政策決定—     
■コラム
  団塊の世代に想う
▼内容を読む

2007年6月10日号(No.2)

■論 説
  自治体シンタンクのすすめ
■時 事
  山中湖村の整備補助事業から見る問題点
   —調整池の官製談合疑惑—
■コラム
  「ワーキングプア」
▼内容を読む

2007年5月10日号(No.1)

■論 説
  自治基本条例における「市民」の定義について
■連 載
  自治体の「予算」を学ぶ
   —その1 「予算って何だろう?」—
■ 時 事
  公共分野の企業参入について
   —介護事業者の不正請求—
■ コラム
  ONE FOR ALL,ALL FOR ONEという精神
▼内容を読む